227
2023.03.10
京都・山城にある徳川家康ゆかりの伊賀越えルートへ。里山の隠れ寺、宇治茶、カフェめぐりも♪
今、大河ドラマで話題の徳川家康。その生涯で最大のピンチは、京都から本拠の岡崎までの200kmをたったの3日で駆け抜けた「伊賀越え」といわれています。当時、家康らが通ったであろう道筋にも、今はSNSで話題の寺院や、国宝仏などが点在。また、山城エリアは「お茶の京都」と呼ばれる宇治茶の産地でもあることから、日本茶カフェもあります。 歴史に思いを馳せながら、家康ゆかりの地をめぐってみませんか?
菜の花と桜が彩る 「観音寺」に国宝の美仏をたずねて
観音寺への参道は菜の花畑のまんなかを通る一本道
まずはJR学研都市線または近鉄京都線三山木駅からバスで約10分の「大御堂観音寺」へ。3月下旬から4月初旬にかけては、参道が一面の菜の花と桜で春色に染まり、夢のような風景が広がります。さらに、今年2023年は、3月25日から4月2日まで「ひとやすみフェスティバル」が催され、無料で菜の花摘みもできますよ。 お堂が近づいてくると、「家康公伊賀越えの道」の石碑が。本能寺の変で織田信長が討たれた後、信長と同盟を結んでいた家康にも身の危険が迫っていました。ちょうどその頃、大阪の堺に滞在していた家康は、今の京都府京田辺市、井手町、城陽市、宇治田原町、滋賀県から三重県の伊賀を抜け、岡崎城へたどり着いたといわれています。
(左)本尊の国宝十一面観音菩薩。衣や指先のラインがなんとも優雅(右上)池越しに眺める本堂(右下)伊賀越えの石碑。横には詳しい説明の書かれた駒札も
観音寺の創建は古く奈良時代。昔は「普賢寺(ふげんじ)」と呼ばれ、あの藤原氏ともゆかりが深かったそう。ご本尊は全国に7体しかない国宝の十一面観音菩薩の1体で、その美しさは「奇跡」とたとえられることもあるとか。 まずは、本堂でお参りをして、ご住職に厨子の扉を開けていただきます。「若々しい、初々しい、みずみずしい、人によって言葉は違いますが、そのような印象を受ける方が多いです」と住職の三神さん。粗彫りした木の内側をくり抜き、表面に漆を盛り上げて肉付けする木心乾漆造(もくしんかんしつづくり)という技法が使われており、彫刻では出せないやわらかさ、血が通っているかのような温かみが感じられます。千年以上も人をひきつけてやまない仏様、無病息災や厄除けの御利益もあるそうです。
観音寺
カンノンジ
世界的珈琲鑑定士が自分だけのためにブレンドしてくれる 「カフェ サボローゾ」
「ライブブレンドコーヒー」400円と、かかおさぼどら390円
京田辺市には、とんちで知られている一休さんが晩年を過ごした一休寺と市街地を結ぶ「一休とんちロード」という一風変わった名前の通りがあります。この通りに店を構えるのが、スペシャリティーコーヒーの専門店「カフェ サボローゾ」です。JR学研都市線京田辺駅からは徒歩10分余りで着きます。 店主の濵﨑さんは実家が喫茶店でコーヒーの香りとともに育ったという筋金入りのコーヒー好き。カフェサボローゾ開業前にコーヒー生豆の商社に勤めていたときは、得意のポルトガル語を活かしブラジルで珈琲鑑定士の資格も取得。中南米にも度々買い付けに行っていました。ちなみに店名の「カフェ サボローゾ」というのは、ポルトガル語で「おいしいコーヒー」という意味だそう。
(左上)かき氷各種500円~(右上)赤い焙煎機が目を引く店内(左下)古民家風のゆるい空間でくつろげる(右下)カフェオレのもと「ごくのみ(無糖)」1450円、「がぶのみ(加糖)」1550円はおみやげに。ラッピングもかわいい
ワールドカップテイスターズチャンピオンズシップ2006で準優勝し、世界第2位の実力を持つ珈琲鑑定士でもある濱﨑さんが淹れてくれるのは「ライブブレンドコーヒー」。自分の好みを伝えると、その場でブレンドをしてくれるというスペシャルなサービスです。たとえば、「コーヒーが苦手でも飲めるコーヒー」、(2人で来て)「全然違うもの」、「このチョコに合うもの」など、どんなリクエストにも応じてもらえます。 また、コーヒーに合うスイーツも用意。「かかおさぼどら」は、生地にコーヒー、餡と生地の間にカカオニブとチョコチップが入った枚方の老舗どら焼き専門店「呼人堂(こじんどう)」さんへの特注品。さらに年間を通してかき氷も。溶けてもさほど薄まらずアイスコーヒーのようにおいしく飲めます。またカカオの品質にこだわったチョコレートもたくさん。 カフェ席は建物内、縁側、庭に分かれているので、その日の天気や気分によって、お気に入りの場所で、自分だけのライブブレンドを味わってみませんか。
カフェサボローゾ
春風に吹かれて「お茶の京都」を一望♪ 「万灯呂山展望台」
展望台からは家康の逃走ルートが手に取るように分かる
このあたりで、空から伊賀越えルートを見てみましょう。標高約300mの大嶺山(万灯呂山)の山頂にある「万灯呂山展望台」へはJR奈良線山城多賀駅から車で約20分。「万灯呂(まんとろ)」の名は、古くは雨乞の際に大嶺山へたいまつ行列が行われたことに由来し、地元にとって身近な存在であり続けてきました。 眼下には木津川が流れ、中央からやや右に山城大橋が見えます。当時この付近には「草内(くさじ)の渡し」があり、家康たちもここで川を向い岸からこちらへと渡り、先を急いだのでしょう。また、向い岸の左に広がる丘は、家康方の武将である穴山梅雪が眠る飯岡。家康一行と行動を共にしてきた梅雪は、ここにきて別行動をとることで窮地を脱しようとしましたが、この草内で命を落としました。
(左上)東屋からも景色が一望(左下)案内板も整備。見えるものが何か分かると楽しさも倍増(右)夜景も木のシルエットも素敵
まだまだ知る人ぞ知る絶景スポットの万灯呂山展望台ですが、芝生や東屋が整備されゆっくり過ごすことができます。また、おすすめの時間帯は夕刻。沈みゆく夕日を眺め、日が落ちて町に光がともり始めると、ロマンチックな夜景が広がります。 春には山頂を彩る桜やツツジ、初夏は山麓の谷川ホタル公園で飛び交うホタル、秋は紅葉など、一年を通じて四季を感じられるのも魅力です。実は、展望台から京都の夏の風物詩である「五山の送り火」も見られるそう。興味津々ですね。
万灯呂山展望台
マントロヤマテンボウダイ
玄米のおやつ専門店 「MINORI工房」でポン菓子&ジェラートを
玄米ジェラート、左から「玄米ミルク」「有機抹茶」「いちごとクランベリー」各380円
万灯呂山展望台の行き帰りには、冷たいものでも味わってみませんか?JR奈良線山城多賀駅から徒歩すぐのところにジェラートのおいしい「MINORI工房」があります。 2022年6月にオープンしたばかりの、まだ木の香りが漂う新しいお店です。一見、おしゃれな普通のカフェに見えますが、すべてのメニューに玄米が使われているお菓子の製造がメインの工房です。「アメリカに住んでいたとき、日本のポン菓子にそっくりな、いろんな味のライスケーキが売っていたんです。卵もバターも使わないスーパーフード。しかもおいしい!日本でも食べたい!!と思いました」と店主の遠藤さん。
(左上)古い集落の一角にあるスタイリッシュな店(右上)「ポンラスク」各200円※夏季は販売休止(左下)塩漬けのさくらがちょこんとのった「玄米ジェラート(桜)」420円(右下)テーブル席に加え、カウンター席も
MINORI工房がつくるすべてのお菓子の基本になっているのが、ジェラートに添えられている「ぽんクラッカー」。オーガニック素材やきび砂糖を使い、植物性の素材だけで香ばしく焼き上げた無農薬玄米のお菓子です。玄米ジェラートも豆乳やココナッツミルクをメインにし、動物性のものを一切使わないやさしい味。ぽんクラッカーなら、ジェラートの繊細な風味を損なうこともありません。 おみやげには、ぽんクラッカーにオーガニックチョコをコーティングした「ポンラスク」を。ベリーやチョコレートマンゴーなど5種がそろいます。また、お店のある井手町は「玉川」の桜が美しいことでも知られており、この春には、桜の葉を練り込んだ新しいジェラートも登場しますよ。伊賀越えさんぽの途中に、ふらりと立ち寄ってみませんか。
MINORI工房
ミノリコウボウ
梅の香りが漂う季節に訪れたい 「城陽酒造」で青谷の梅酒を
小瓶を2本買うと酒蔵をデザインしたパッケージに入れてくれる
居酒屋さんのメニューでよく見る「青谷の梅酒」。青谷ってどこかご存じでしょうか?実はここ、伊賀越えルート沿いの城陽市にある地名なのです。そこで梅酒を作る酒蔵「城陽酒造」を訪れてみましょう。 城陽酒造へは、JR奈良線山城青谷駅から徒歩すぐ。創業から120年以上を経た山城地域では唯一の酒蔵です。京都の酒といえば、伏見がよく知られていますが、城陽は伏見よりもやわらかい、酒造りに適した地下水に恵まれているそう。また、城陽酒造のお酒の持ち味はフレッシュさ。クセのないエレガントな風味は、料理の味を損なわず、食べながら飲む食中酒として味わうのがおすすめです。
(左上)「城州」300ml 715円、「城州Premium」300ml 1375円(右上)白壁がまぶしい酒蔵(左下)直売所にも梅酒や梅にちなむ商品が並ぶ(右下)「うめごこち」9粒入 540円
蔵から2キロほど山手に向かうと、京都府最大の梅林「青谷梅林」が広がり、城陽酒造の梅酒には、この梅林だけで収穫できるご当地梅「城州白(じょうしゅはく)」が使われています。大粒でほどよく熟した城州白は、桃のような香りがするそう。黄色のラベルの「城州」は3年、ピンクのラベルの「城州Premium」は5年以上熟成させ、色も味も飲み頃になったタイミングで出荷されます。 また、お酒が飲めなくても、梅ジュースや梅サイダーが用意されているので城州白を味わうことはできます。甘めの原酒に漬けた梅の実自体を味わう「うめごこち」は、そのままはもちろん、ゼリーやケーキに入れてお菓子にしてもよさそう。酒蔵の横にある直売所に、ぜひ足を運んでみてくださいね。
城陽酒造
ジョウヨウシュゾウ
家康もひと休みしたかったかも??「上方温泉一休 京都本館」
「滝の湯」の内湯から景色を眺めて極楽気分
家康が駆け抜けたという伊賀越えルートは、確かな記録が残っているわけではなく諸説あります。そのなかのひとつ、城陽市の青谷梅林を国道307号線沿いにどんどん東に進み、滋賀県の信楽へと抜ける「田原道」にある山あいの温泉で、旅の疲れを癒やしてみませんか? 「上方温泉一休 京都本館」へは、近鉄京都線新田辺駅からバスで20分。ホームページからお得なバス利用券がダウンロードできるのでぜひ使ってくださいね。たった20分なのに、風景はすっかり山の中、「美人の湯」「美肌の湯」ともいわれる「松泉乃湯」を源泉とする天然温泉で、うっすらと白く濁ったお湯につかると、肌がツルツルのもちもちになるそうです。
(左上)古民家風のたたずまい(右上)マイナスイオンいっぱいの赤窯風呂(左下)自分の世界に浸れる陶器風呂(右下)野趣あふれる滝の湯
温泉に一歩踏み込むと、レストラン、リラクゼーションにエステと、あまりの広さに驚かされます。お風呂は原生林の松がそのまま残る「松の湯」と、滝のある「滝の湯」の2つがあり、週替わりで男女が入れ替わります。 この日訪れたのは「滝の湯」。まずは内湯で風景を楽しみ、体が温まったら露天風呂に。ときには、滝に虹がかかることもあるそうです。ひとり用の陶器風呂にしっぽりと身を沈めたり、赤窯風呂(サウナ)で身体の芯まで温めたりと楽しみは尽きません。春には滝のそばの桜の大木が満開になるそう。花見風呂もいいし、散り際の花びらが浮かぶお湯につかれるなんて最高です。きっと旅の疲れが癒されますね。
上方温泉一休 京都本館
カミガタオンセンイッキュウ キョウトホンカン
遠くてもやっぱり一度は見たい♪ 「正寿院」の猪目窓と花天井
自分や時間を忘れるという意味の「則天の間」とも呼ばれる客殿
上方温泉一休からさらに車で東へ30分。山肌を茶畑が覆う里山にある、地域のお寺といったたたずまいの正寿院に到着します。バスで行く場合は、JRまたは京阪宇治駅から直通バスがありますが、期間や運行日が限られているので事前に調べてから利用しましょう。 正寿院は約800年前に創建された高野山真言宗の寺院で、仏像ファンの間では快慶の不動明王像を所有することでも知られています。境内が本堂と客殿に分かれているので、まずは本堂で秘仏の十一面観音像に手を合わせることからスタート。仏様のおられる天井には、300年前の曼荼羅(まんだら)が描かれており、これを現代に復興したのが色鮮やかな客殿の花天井なんだそう。
(左上)猪目窓には四季が映る(右上)天井画は寝ころんで鑑賞してもOK(左下)本堂の四季を描いた襖絵も必見(右下)季節の御朱印500円~、水引猪目お守 各800円
本堂の四季が描かれた襖絵は、日本画家の諌山宝樹さんによるもので2021年に奉納されたばかりの新しい作品。また長押の釘隠し(装飾)には、よく見るとハートの形をした猪目形の穴が開いているので見逃さないで。 客殿の猪目窓には福を招き災いを除く意味が込められているそうです。花天井は90人の作家が腕を振るって花や四季の風景を描いたもの。中には舞妓さんの絵も4面描かれているので、探してみてくださいね。お参りが終わったら記念の御朱印もぜひ。イラスト入りのものは書置きが増えてきた今、直書きしていただける貴重な機会です。また、6月から9月にかけては風鈴まつりが催され、2000個を超える風鈴が里山に涼し気な音色を響かせます。季節をかえて何度でも訪れたくなるお寺です。
正寿院
ショウジュイン
緑茶発祥の地でお茶三昧の体験を 「宗円交遊庵やんたん」
やんたんの郷土の味がたっぷり「彩りの茶汁セット」1000円(土・日曜、祝日のみ)
上方温泉一休と正寿院のちょうどまん中あたりに湯屋谷(ゆやだに)という地域があります。地元では「やんたん」と呼ばれ、ここは江戸時代に緑茶が誕生した地です。それまでのお茶というのは文字通り「茶色」。この村の永谷宗円が考案した美しい緑の煎茶は、またたく間に全国へ広がったといいます。 それではさっそく、お茶の観光施設「宗円交遊庵やんたん」を訪ねてみましょう。まずは郷土料理の「茶汁」をいただきます。お茶づくりで忙しい時期に食べる、焼いた餅に味噌を添え番茶をかけたご当地ファストフード。番茶ならではの香ばしさがお餅によく合います。プリッとした肉厚のしいたけ、茶殻とおじゃこを和えた郷土料理、ご飯には茶葉のふりかけもかかっており、やんたんの味がぎゅっと詰まったお膳です。
(左上)「煎茶・玉露の飲み比べセット」600円(右上)お座敷もあるカフェスペース(左下)手軽に味わえるティーパック「ほうじ茶 やんたん」「煎茶 やんたん」各1000円(右下)生産者別の茶葉は選ぶのに目移りしそう
さらにぜひチャレンジしたいのが茶所ならでは、お茶の飲み比べ。日光をたっぷり浴びて甘みの中にも渋みが感じられる「煎茶」、日光をさえぎることで甘みや旨みを引きだす「玉露」、ふだん飲んでいるお茶とは違う飲み物のように思えるかもしれません。 併設のショップには、心を込めて茶葉を作る生産者別のお茶が販売されています。いわば日本茶のシングルオリジンです。試飲もできるので、お気に入りの茶農家さんを見つけてくださいね!宗円交遊庵やんたんでは、飲み比べのほかに、抹茶の石臼挽きや茶葉の手もみ体験もできます(事前申し込み要)。お茶に関する昔の資料や、近隣の観光MAPもそろうので、宇治田原さんぽをする際には、ぜひ立ち寄ってみませんか。
宗円交遊庵やんたん
ソウエンコウユウアン ヤンタン
京都観光というと京都市内だけで終わりがちですが、市内では出会えないようなユニークなスポットや、おいしいものが盛りだくさん。「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」の京都応援クーポンをかしこく使って、徳川家康ゆかりの地や、初めての「お茶の京都」を旅してみませんか。
きょうと魅力再発見旅プロジェクト
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。
山村純也、戸塚江里子 撮影:橋本正樹、小川康貴
京都府南部(山城地域)の観光情報サイト
京都山城エリアは「お茶の京都」と呼ばれる「日本茶のふるさと」。時の天下人に引き立てられながら、お茶を育む技術と文化は花開き、今もな受け継がれています。 お茶の産地ならではの風景やグルメ、お茶にまつわる文化体験など、800年の歴史に磨かれた、ここでしか味わえない特別な旅をお楽しみください。
ごはん
の人気記事
の人気記事