191
2016.04.28
日本初公開の『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』含む100点以上を展示。「オルセー美術館・オランジェリー美術館所蔵 ルノワール展」開催中
印象派を代表する画家、ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841−1919)。4月27日から六本木の国立新美術館で「オルセー美術館・オランジェリー美術館所蔵 ルノワール展」がスタートしました。日本初公開となる代表作『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』をはじめ、100点を超える作品や貴重な資料を一堂に集め、ルノワールの全貌に迫ります。 メイン画像:《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》 1876年 油彩/カンヴァス オルセー美術館 ©Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF
パリでも実現しない代表作が大集結
ルノワール愛用の絵の具箱とパレットの展示もある
今回の展覧会は、パリのオルセー美術館とオランジュリー美術館が所蔵する、計100点を超える選りすぐりの作品などを一堂に集めた過去に類を見ないものです。 通常はセーヌ川を挟んで建つ2つの美術館に分かれて展示されているため、別々に観るしかありませんが、本展覧会では両美術館の貴重なコレクションを合わせ、ルノワールの60年におよぶ創作活動を、時代を追って観ていくことができる点が大きな特徴になっています。
《読書する少女》 1874-1876年 油彩/カンヴァス オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
日本初公開! 『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』
『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』と同時代に描かれた《ぶらんこ》 1876年 油彩/カンヴァス オルセー美術館 ©Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF
1876年、30代半ばに描かれた『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』は、ルノワールの代表作といわれる作品です。「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」とは、パリ・モンマルトルの丘にある大衆的なダンスホールのことで、ここに集まった人々の楽しげな様子が描かれています。 実際に見てみると意外なほど大きな作品で、「楽しさこそ芸術の目標である」というルノワールらしい明るさに満ちています。 ただ、この作品には晴れ渡った空はまったく描かれていません。日の光は空ではなく木漏れ日と、それらが織りなす色彩の変化で表現されているのです。手前右側に背を向けて座る男性の、ジャケットにある斑模様は木漏れ日がつくったもの。今まで何度も印刷物などで見た作品ですが、実物を目の前にすると、そんな光の表現方法に改めて驚かされます。
足を止めて光の世界に入ってみよう
45年ぶりに揃って来日した2つのダンス
左/《田舎のダンス》 1883年 油彩/カンヴァス オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF 右/《都会のダンス》 1883年 油彩/カンヴァス オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
1833年、ルノワールが印象派から古典主義へと傾倒していった時期に描かれたのが、『田舎のダンス』と『都会のダンス』です。この対照的な2つの絵は、同時期に描かれ、ほぼ同じサイズで、常に一緒に展示されてきました。 当初、どちらの絵もシュザンヌ・ヴァラドンという女性がモデルを務める予定でしたが、それに嫉妬したアリーヌ・シャリゴが『田舎のダンス』のモデルになったという話もあります。アリーヌ・シャリゴはのちにルノワールの妻になりました。
ルノワールが最後に描いた『浴女たち』
《浴女たち》 1918-1919年 油彩/カンヴァス オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
晩年のルノワールが、最も熱心に取り組んだのが裸婦をモチーフにしたものです。年を経るごとにタッチは丸みを帯びて柔らかくなり、古典的なデッサンと印象派時代の色彩が融合したような作風へと向かっていきます。やがて最晩年にたどり着いたのは、豊満でバラ色の肌をもつ裸婦像なのです。 健康を損ない、次第に手が硬直し、車いす生活さえ余儀なくされたルノワールは、亡くなるまでの数か月間を費やして『浴女たち』を描きあげました。タテ110センチ、ヨコ160センチもの大きなカンヴァスに対峙するエネルギーに、ただただ畏敬の念を抱くばかりです。 そこには、病に冒された画家の苦悩は微塵も感じられず、光に満ちた楽園で、のびやかに寛ぐ女たちの幸せな光景がただ広がるばかりです。 見ているものを幸せな気持ちにしてくれるルノワールの絵画。本物のルノワールを観に出かけてみましょう。
オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展
オルセービジュツカン・オランジュリービジュツカンショゾウ ルノワールテン
東京都 港区六本木7-22-2
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。
青木 萌
の人気記事