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2023.07.18
美術館マニアがおすすめする「美術館沼に落ちる・隠れた名美術館6選」|by PARISmag
毎日の暮らしのなかで少しだけ心が弾むような豊かさをお届けするWEBマガジンPARIS mag(パリマグ)から、『隠れた名美術館6選』をご紹介します。
「おすすめの美術館ってどこ?」などと、美術館巡りが趣味の人間に安易に聞いてはいけない。
表面上はにこやかに「え〜どこかなぁ〜」と笑いながら、心の中では、「この1回で確実に沼に落とす……!」などという、物騒なことを考えているかもしれないからだ。
今回の記事では、都内を中心に、週に1度の美術館巡りを10年ほど続けている私、「もえの美術館巡り」がおすすめしたい「美術館沼に落ちる・隠れた名美術館6選」をご紹介します。
国内有数の充実したコレクション『アーティゾン美術館』
まずご紹介するのは、JR東京駅から徒歩5分という好立地にある「アーティゾン美術館」。 この美術館は、2020年1月にブリヂストン美術館が名前を新たに開館した、都内でも比較的新しいアートスポットです。 この美術館の素晴らしさは、まずなんといっても、充実したコレクション。
印象派などの貴重な作品を多数所蔵しているほか、日本の近代洋画、そして近年は現代美術の収集にも力を入れ、そのコレクションは国内有数の充実度です。 さらにおすすめなのが、1階のミュージアムカフェ。
広々とした展示室でアートを楽しんだ後はぜひすてきなカフェにも立ち寄ってみてください。
アーティゾン美術館
アーティゾンビジュツカン
非日常的な展示空間でアートを楽しむ『菊池寛実記念 智美術館』
そして、都心にある大人なアートスポットといえば、こんな美術館もおすすめです。
「菊池寛実記念 智美術館」は、大使館が立ち並ぶ東京の一等地、港区虎ノ門の一角にある美術館。
現代陶芸のコレクターであった菊池智氏のコレクションを元に2003年に開設されました。
現代工芸に特化した展示を行う施設なので、工芸の分野に関心がなければ、なかなか足が向くことはないかもしれません。
しかしながらこの美術館、展示空間がとても魅力的なのです。
画像提供:菊池寛実記念 智美術館
ガラス製の手摺りが輝く螺旋階段を伝って地下に降りると、ホワイトキューブになりがちな一般的な展示室とは一線を画す、独特の展示空間が広がります。
知られざる現代工芸の世界へと誘ってくれる、個性的な魅力を持つ美術館です。
菊池寛実記念智美術館
キクチカンジツキネントモビジュツカン
https://www.musee-tomo.or.jp/
月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日が休館日。GWなどの月曜日を含む連休の場合は、連休明け平日が休館日となります。
家の中に現れる美しい庭も必見『台東区立朝倉彫塑館』
日暮里駅から程近い『台東区立朝倉彫塑館』は、明治から昭和にかけて活躍した、日本を代表する彫刻家、朝倉文夫(あさくら・ふみお)の自宅兼アトリエを公開する美術館です。
画像提供:台東区立朝倉彫塑館
館内のアトリエでは朝倉の生き生きとした作品を、間近で鑑賞できます。 そしてこの美術館は、その独特の建築も見逃せません。 無機質な黒い外観からは想像がつかないですが、奥の住居棟へ進むと、なんと目の前に、美しい庭が現れます。
画像提供:台東区立朝倉彫塑館
朝倉文夫はこの庭を自己反省の場とし、日々眺めながら、創作活動に励んだそう。 作家の美意識が垣間見える邸宅は、いつ訪れても穏やかな気持ちにさせてくれる、素晴らしい空間です。
朝倉彫塑館
アサクラチョウソカン
建築美に酔いしれる『渋谷区立松濤美術館』
ところで、都内の美術館で「名建築」といえば、外せない美術館が渋谷にあります。 渋谷駅の雑踏を抜けた先にある高級住宅地、松濤。 その閑静な街並みの中にある「渋谷区立松濤美術館」です。
この美術館も、中に入ると、思いもよらない驚きが待っています。 石造りの無骨な外観を裏切るように、内部には吹き抜けがあり、地下から湧き出る噴水がその中でキラキラと輝いています。
一風変わった雰囲気が漂う建物ですが、それもそのはず。 この松濤美術館は、戦後日本の建築界で異彩を放った建築家・白井晟一(しらい・せいいち)が設計した美術館なのです。 白井は1905年京都生まれ。ドイツで哲学を学んだ後、独学で建築の道に進むという異色の経歴を持ち、そのユニークなスタイルから「哲学の建築家」「異端の作家」などと評されました。
企画展も渋谷という多様性のある土地にあったおもしろいものが多く、つい足を運びたくなる美術館のひとつです。
渋谷区立松濤美術館
シブヤクリツショウトウビジュツカン
自然とともにアートを楽しむ『DIC川村記念美術館』
さて、ここまで都内の美術館を中心にご紹介しましたが、もう少し足を伸ばすなら、こんな美術館もおすすめです。
千葉県佐倉市にある『DIC川村記念美術館』は、都心では味わえない、郊外の美術館ならではの、すばらしい自然が魅力。 展示内容も大変充実しており、貴重なレンブラントの油絵を常設展示するほか、世界に4か所しかない抽象絵画の巨匠マーク・ロスコの専用展示室、通称「ロスコ・ルーム」も併設されています。 特にロスコ・ルームは、この空間を見るためだけに遥々訪れる人がいるほど。一見の価値がある展示です。 さらに美術館の敷地内には、四季折々の花が咲く、約3万坪もの美しい庭園が広がっています。
隣接のレストランでは千葉県産の食材をふんだんに使用したイタリアン、そして、館内のお茶室では美術館オリジナルの和菓子がいただけます。
東京駅からは直通の高速バスで約1時間と、座っていれば、いつの間にか着いてしまうアクセスの良さも魅力の1つ。 ぜひ1度訪れてみてほしい、楽園のような美術館です。
DIC川村記念美術館
ディーアイシーカワムラキネンビジュツカン
画家の家を改造したフランス初の個人美術館『ギュスターヴ・モロー美術館』
ここまでは日本国内のおすすめ美術館を紹介してきましたが、最後はパリマグ読者の皆様に向けて、フランス・パリにある、とっておきの美術館をご紹介します。 ルーヴル、オルセー、オランジュリー…… パリといえばそんなすばらしい美術館の宝庫ですが、そうした有名どころに負けず、小規模ながら独特な魅力を放つのが、9区にある『ギュスターヴ・モロー美術館』です。
19世紀後半、フランスで活躍した画家、ギュスターヴ・モロー。 このギュスターヴ・モロー美術館は、画家のアトリエ兼住居を改装したフランス初の個人美術館です。
3、4階の展示室に入れば、そこには360°すべてモローの作品に囲まれる至福の空間が広がります。 室内にはモローの絵から出てきたのではないかと思われるような美しい螺旋階段が伸び、美術館全体に、今なお画家の濃密な美意識が溶け込んでいるかのようです。
あまり自分のことを語りたがらなかったと言われるモロー。 そんな彼の知られざる一面を垣間見ることのできる、唯一無二の美術館です。
*** いかがでしたか? 美術館巡りというと、特に日本では、期間限定で開催される特別展を目指して訪問することが多いように感じます。 しかし、今回ご紹介したのは、美術館そのものの佇まいが素敵な、いつ訪れても心地よい体験ができる場所ばかり。 梅雨が明ければ、いよいよ開放感溢れる夏がやってきます。 これからのおでかけシーズンに向けて、様々な行楽地と共に、ぜひ美術館もチェックしてみてください。 そしてぜひ、ハマったら抜け出せない、楽しい美術館巡りの沼へと足を踏み入れていただければ幸いです。 執筆:もえの美術館巡り
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