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2024.10.10
10/5-2/11|国立西洋美術館で開催中!晩年を彩る「モネ 睡蓮のとき」をレポート
東京・上野にある国立西洋美術館では10月5日(土)より「モネ 睡蓮のとき」が開催中。今回は、その展覧会のみどころをレポートします。 メイン画像:「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025
モネの晩年に焦点を当てた、日本最大規模の「睡蓮」を集めた展覧会
印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840〜1927年)。今回の展覧会では、パリの「マルモッタン・モネ美術館」から、日本初公開作品7点を含む50点もの厳選された名作が日本に上陸。モネの晩年のテーマである「睡蓮」をモチーフとした、20点以上の関連作品が展示されています。さらに、日本国内に貯蔵されたコレクションを加えた、国内外のモネの名作が一堂に集結する充実したラインナップで見応えある展覧会となっています。
モネの視点で水辺をたどる
展覧会正面入口に入ると、そこには帽子をかぶったモネの頭部が「睡蓮の池」の水面に映る写真パネルが設置されています。まるでモネの目線を通して、観る人が水辺の風景を一緒に歩んで行くかのように、モネの作品の世界へと没入するきっかけを与えてくれます。つい見逃してしまいそうなポイントになっているので、入場時にはぜひチェックしてみてくださいね。 本展覧会は主に、4つのセクションとエピローグから構成。第1章からエピローグに至るまで、観るものをモネの世界へと没入させてくれます。作品を通して水や水辺の植物、周囲の木々や空、光の関わりを軸に、モネがいかに水面を追求し、晩年に至るまで進化し続けていったかをより深く理解していく絶好の機会になっています。
セーヌ川から「睡蓮」へ
クロード・モネ《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》1897年 マルモッタン・モネ美術館、パリ
最初の章では、1890年代後半に主要なモチーフとなった、セーヌ河の風景や3年連続で訪れたロンドンの風景を描いた作品群からスタート。モネがいかに水というモチーフ、水面に映し出される光と大気が織りなす効果を作品に反映させていったかがうかがえます。 次第にモチーフはセーヌ河を流れる水から睡蓮の池へと変化し、晩年のモネの礎(いしずえ)を築いくかのような展示エリアになっています。
クロード・モネ《チャーリング・クロス橋、ロンドン》1902年頃 国立西洋美術館(松方コレクション)
左:クロード・モネ《睡蓮》 1897-1898年頃 鹿児島市立美術館 右:クロード・モネ《睡蓮、夕暮れの効果》 1897年 マルモッタン・モネ美術館、パリ
睡蓮をモチーフとした初期の連作は、後半に出てくるモネ晩年の〈睡蓮〉と比較することで、表現の変遷を鑑賞できるのも魅力です。
花のモチーフと装飾画
「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025
1909年の「水の風景連作」展以降、のちに白内障と診断される視覚障害の兆候や最愛の家族の不幸がモネを襲います。 第2章では1914年にふたたび制作活動に取り組み始めたモネが、庭に咲いているアイリスやアガパンサス、キスゲ、藤(ふじ)といった、植物をテーマに描いた装飾画が展示されています。
左:クロード・モネ《藤》1919-1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ 右:クロード・モネ《藤》1919-1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ
1920年モネは「睡蓮」のパネルをフランスに寄贈し、敬愛するオーギュスト・ロダンの美術館が閉館してまもないオテル・ビロン敷地に展示館を建設する予定でしたが、財政問題により断念。 こちらの会場に展示されている2点の藤のフリーズ(帯状装飾)は、現存する藤のフリーズの中でもひときわ大きなもの。明るい色彩と大胆な筆使いに魅了されます。
クロード・モネ《睡蓮とアガパンサス》1914-1917年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ
全てクロード・モネ 左から:《アガパンサス》1914-1917年頃 マルモッタン・モネ美術館 パリ、《睡蓮》1914-1917年頃 アサヒグループ大山崎山荘美術館、《睡蓮》1914-1917年頃 マルモッタン・モネ美術館 パリ
また、この章ではアガパンサスを主題とする幻の装飾画に関する3点の作品もみどころのひとつ。モネの制作プロセスをじっくり垣間見ることができるのでモネが庭を散策したようにゆっくりと鑑賞してみるのもいいかもしれません。
Fig.2 クロードモネ《アガパンサス》三連画、アンドレ・マルティ撮影、1921年2月
まるで睡蓮の池に囲まれる大装飾画の空間へ
「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025
階段を上がり第3章の小さな間口をくぐると、そこには楕円形の壁がぐるりと囲む展示室があらわれました。思わず「うわっ」と声が出てしまいそうな洗礼された空間が広がります。
クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ
こちらのエリアではモネが晩年に10年以上の歳月をかけて数百点以上を制作し、追い求めた大装飾画(巨大な睡蓮の池を描いたパネル)の計画をした楕円形の部屋を再現しています。 展示室をぐるりと見渡すと、まるで睡蓮の池に囲まれ、池の水面に映る空や木々と一体になれるような体験ができます。
「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025 写真の左奥にあるのが《睡蓮、柳の反映》1916年? 国立西洋美術館(旧松方コレクション)
また、こちらのエリアでは2016年に発見された《睡蓮、柳の反映》も展示。上部が欠損した作品と欠損前の作品の画面に描かれていたものと同じモチーフを描いた、マルモッタン・モネ美術館の作品が隣り合わせに展示されています。会場で想像を膨らませながら2つを比較してみるのも◎
晩年のモネ—逆境を乗り越え探究心を失わない小型作品の数々
左右とも:クロード・モネ《日本の橋》1918年 マルモッタン・モネ美術館、パリ
第4章では巨大な装飾画と並行して制作された、小型の作品群も展示されます。悪化の一途をたどる白内障の症状がモネの視覚を変容。 モネはそんな逆境に立ち向かいながらも”水の庭”の池にかかる日本風の太鼓橋や枝垂れ柳、”花の庭”に咲くのばらのアーチがある小道を描いています。鮮烈な色彩や大胆な筆遣いから、晩年のモネはどんな気持ちだったのかを想像してみると思わず胸を打たれます。ぜひ会場でその探究心を作品から感じ取ってみてくださいね。
左右とも:クロード・モネ《枝垂れ柳》1918-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ
「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025
エピローグ—悲しみの象徴としての枝垂れ柳
左:クロード・モネ《枝垂れ柳と睡蓮の池》1916-1919年頃、右:クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、パリ
展覧会の最後を飾るのは、〈枝垂れ柳〉をモチーフにした睡蓮の作品です。第一次世界大戦中に描かれたこれらの作品は、柳の木がまるで涙を流しているかのような姿が、大きな悲しみを象徴しています。絵の前に実際に立ってみるとモネが抱いた深い思いを感じる、締めくくりにふさわしい展示になっています。 「モネ 睡蓮のとき」は、モネの晩年の探究心やその世界観を、観る人に深く体感させてくれる貴重な機会。彼の作品に込められた情熱と、晩年に至るまでの進化を、実際に展示会に足を運んで味わってみてくださいね。
「モネ 睡蓮のとき」鑑賞後は、ギフトショップも見逃せない!
キレイなブックマークやリングノートも
展示会鑑賞後は、ギフトショップでお買い物もかかせません。「モネ 睡蓮のとき」では、”五感でひたるモネ”をコンセプトにした、展覧会グッズが盛りだくさん。 「見てひたるモネ」「聴いてひたるモネ」「香りでひたるモネ」「食べてひたるモネ」「触れてひたるモネ」を切り口とした、バラエティーに富んだアイテムが勢ぞろいしています。
左:オーガンジー刺繍バッグ、右:「FEILER」とのコラボハンカチ
左上:ヴォヤージュサブレ、右上:折りたたみ傘、左下:ハンド&ネールクリーム、右下:アンバサダーコラボシルクスカーフなど
どれもステキでどれにしようか迷ってしまいそう。 中には本展のアンバサダーの石田ゆり子さんがイラストレーターのShogo Sekineさんとタッグを組んで制作したオリジナルのスカーフも。世界遺産「富岡製糸場」のある富岡市技術を集結した純国産シルク上質なシルクスカーフになっています。 展示会を訪れた際は鑑賞の思い出に、自分にぴったりのグッズを探してみてはいかがでしょう。
「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025
モネ 睡蓮のとき
もね すいれんのとき
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モリサワ ジュンコ
Writer
物撮り写真家 モリサワ ジュンコ
魅力あふれるモノゴトをインスピレーションとともにお伝えします。デザインやアート、建築が好き
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