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2015.02.05
木々に囲まれた「旧白洲邸 武相荘」で過ごす、昭和モダンな時間
東京・町田市の緑豊かな鶴川の高台にたたずむ「旧白洲邸 武相荘(ぶあいそう)」。戦後の外交の最前線で活躍した白洲次郎とその妻・正子の旧邸宅は、資料館&ティールームとして公開されていましたが、2015年1月にレストラン&カフェとしてリニューアル・オープン。昭和の面影が残る和モダンな空間で、ひと時を過ごしてみませんか。

昭和を代表するモダンな夫妻の暮らしぶりがわかる

次郎が17歳の時、父から贈られたアメリカ車と同型のクラシックカーが迎えてくれます
小田急線で新宿から快速急行と各駅を乗り継いで鶴川駅まで25分。駅からのんびり歩いても15分ほど。ゆるやかにカーブを描くアプローチを上りきると、門が見えてきます。 夫は戦後の日本で「従順ならざる唯一の日本人」とマッカーサーに一目置かれた白洲次郎。その妻は伯爵家の令嬢として生まれ、日本の伝統美を追求して「稀代の目利き」といわれた白洲正子。あまりにもドラマチックでカッコよすぎる夫妻が、終の棲家として過ごした邸宅がこの「武相荘」です。

夫妻が趣味を楽しんだ工作室をレストラン&カフェとしてリニューアル

工作室がモダンなレストラン&カフェに
1943(昭和18)年、戦争による食糧難を心配した夫妻は鶴川(現在の町田市)の地に茅葺きの農家を買い、移り住みました。武蔵と相模の国境にあり、「不愛想」の言葉に次郎独特のひねりを効かせて命名したこの場所には、二人を慕って多くの文化人、政治家などの著名人が集ったといわれます。 白壁に「武相荘」と記された1棟がレストラン&カフェ。この建物はもともと夫妻が陶芸を楽しんだり、趣味の道具を置いていたりしていたことから、「工作室」と呼ばれていた場所です。

郊外でひっそりと暮らす夫妻を慕い、昭和を代表する文化人・政治家が集いました

白洲家の食卓を忠実に再現したメニュー

ランチメニューの「海老カレー(飲み物付き)」(2300円)
2階ほどの高さがある窓から自然光が差し込む室内では、長女の牧山桂子さんの著書『白洲次郎・正子の食卓』(新潮社)にも登場する家庭料理を再現したメニューを味わえます。 ビーフシチュー、オムレツライス、グラタンといった洋食メニューのなかでも、おすすめはカレー。野菜が好きではなかった次郎のため、玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモをすべてすりおろし、10種類以上のスパイスで仕上げてあり、「キャベツの千切りだけは、残さず食べた」というエピソードから、付け合わせにはたっぷりのキャベツの千切りが添えられています。

お肉がお箸ですっと切れるほど柔らかい「ビーフシチュー(飲み物付き)」(2300円)

二人の気配が今も感じられる母屋はミュージアムになっています

革張りのソファが置かれた居間兼応接間
夫妻が人生の大半を過ごしたという大きな茅葺き屋根の母屋は、ミュージアムとして公開されています。入り口を入ってすぐのスペースが、居間兼応接間。吉田茂氏から譲り受けた皮張りのソファのかたわらにゴルフクラブ、酒器などの愛用品がならび、来客をもてなす次郎の姿が目に浮かびます。 大量の書籍に囲まれた正子の書斎、着物や器が広げられた座敷にも生活感がそのまま残り、ついさっきまで二人がそこにいたような錯覚に陥ります。

正子が執筆を行った書斎。膨大な書物に圧倒されます

正子愛用の着物。次郎との結婚式に来た着物も展示されています

季節ごとの企画展も開催中

高床の蔵を利用したバーや、庭の散策も楽しめます

使いこまれたバーカウンターの奥には、次郎が好んだ洋酒がならびます
納屋として使われていた高床の小さなスペースに新設されたのが、アンティーク感いっぱいのバー。壁面のスクリーンに映し出された若き日の夫妻の写真からも、二人がどれだけおしゃれでお似合いのカップルだったのかがよくわかります。 武蔵野の面影を残す敷地内の庭の散策も楽しみ。一休みしたくなったら、レストラン&カフェの「デザートセット」(1200円)がおすすめです。都心から1時間足らずでちょっとした小旅行の気分を味わえる武相荘は、四季折々にふらりと訪れてみたい場所です。

レストラン&カフェ 武相荘
レストラン&カフェ ぶあいそう
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永田さち子
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