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2018.03.16
秘密にしておきたいくらい居心地のいい“奥渋”の和食バル「emma.」(エマ)【カウンターのタネ】
小田急線代々木八幡駅から徒歩10分、渋谷駅から徒歩15分、ここ数年で人気エリアとなった「奥渋」と呼ばれるエリアの一角にある和食バル「emma.」(エマ)。 看板が出ていなければそこにお店があるとは気付かない場所にひっそりと佇むこちら。お店をひとりで切り盛りするのが、店主の江間瞳(えまひとみ)さん。 「閉店間際になると『あ。もうこんな時間か』と慌てるお客様が多いですね(笑)」(江間さん) 忙しかった1日から解き放たれてほっと一息ついたり、仲の良い友人と近況をゆっくりと話したり...10席のカウンター席にはいつもくつろいだ空気が溢れています。

週替わりの季節の旬と「毎日食べたい」定番料理

週替わりで変わるメニュー。いつも季節の旬が並ぶ。右下は定番の「だし巻き玉子」
「emma.」のメニューは、数種類の定番料理のほかはすべて週替わりで、その時期の旬を食べることができます。 季節の料理を楽しみに来る方はもちろん、定番メニューも同じものを毎回頼む人も多いのだとか。そのうちのひとつが「だし巻き玉子」。 「私が毎日食べたいと思えるような味にしているだけで特別なことはしていません(笑)。でも受けを狙ったメニューよりも、私が食べたいと思って作ったメニューの方が長く愛されているような気がします」(江間さん)
「書道4段なんです。やっておいてよかった(笑)」綺麗な字で書かれるメニューはすべて江間さんの直筆
飲み物はビール、ワイン、日本酒、ウイスキー、果実酒と一通り揃っているものの「和食のやさしい味が中心の料理なので、癖がなく味が強すぎないお酒」を選んでいるとのこと。 ビールは埼玉のクラフトビールの「COEDO」の中でも特にスッキリした後味の「瑠璃」を、ウイスキーも和食に合うテイストの「白州」と「知多」を用意しています。 やさしい味わいの料理とお酒は、ぬくもりを感じるウッディ―な店内の雰囲気とマッチしています。このスタイルにした理由について江間さんは「ずっとこんなお店を探していたから。お店は私が客として欲しかったお店なんです」と話します。

忙しい社会人時代に思い描いた「ほしいお店」を形に
江間さんは大学の頃から「いつかお店を持ちたい」と漠然とした目標を持っていました。 大学卒業後は“いつか”の勉強のために飲食店に就職しますが、現実の厳しさを目の当たりにし目標を胸にしまったまま、転職を繰り返します。 4社目に就職した食品の通販会社では企画を考える部署に配属され、連日忙しい業務が続き退社時間が22時を回ることも多かったそうです。 「遅い時間に仕事を終えて1杯だけ飲んで帰りたいと思ってもオフィス周辺にはスペインバル、大衆居酒屋、焼き肉屋しかなくて...『今そこに行く元気はないなぁ』と思ってました。野菜のおかずをちょっとだけつまんで1杯飲んでリセットして帰れるお店があればいいのに。そんなお店をいつか持てたらなぁと思っていたんです」(江間さん)

締めにはご飯ものも用意。※メニューは変更になっている可能性があり
転機が訪れたのは入社して1年半ほど経った頃。 「難しい案件にぶつかり行き詰ったんです。そのときに社長に相談しに行ったのですが、私の話もそこそこに『できるかできないかではなくて、やるかやらないかだ』という厳しい言葉をもらって」(江間さん) しかしその言葉で吹っ切れた江間さんは「とにかくひとつひとつやれることから」動いてみました。 「やってみたらなんとなく実現してしまったんですよね。それがきっかけで『やれないことなんてない』と自信がつきました。ぼんやりと思い描いていたお店を持つという目標が急に具体的なことに思えてきたんです」(江間さん) そこから食品通販会社で働きながらお店の準備をコツコツと進め、2年後の2016年9月に念願のお店「emma.」をオープンさせます。

くつろげる空間を追求したお店の雰囲気づくりとは

カウンター上にはいつも季節の旬の料理が並ぶ
「emma.」にはお客さんの目線に合わせた工夫が店内のいろんな場所に施されています。 「まず決めていたのはカウンター越しのお客様と目線を合わせること。私自身お店に行くときにカウンター越しに店員さんを見上げるのがあまり好きではなくて。目線を合わせることで一気に距離が縮まる気がするし、お客さんもほっとできると思ったんです」(江間さん) 立って作業をする江間さんと座っているお客さんはそのままでは視線が合わないため、お客さんの床を高くする設計にしたのだとか。 「それから椅子は長時間座っても疲れにくいものを選びました。座面の形が体にフィットして、高さを少し低めになっているものにしたことで飲んでいるときに足の疲れが気にならないように」(江間さん)
「食器、グラスなど降れるものは触って心地よくなるようなものを選んでいます」(江間さん)肌馴染みのいい器で提供される料理もくつろげるひとつの工夫
カウンターの板の色使いにも江間さんの気配りが表れています。 「高級なお寿司屋さんはピシッとした白木の一枚板のカウンターで格式が高い雰囲気がありますよね。うちは家にいるような雰囲気を出したかったから、カウンターの色は濃い茶色にして木目もはっきりしているものにしました」(江間さん) 「お店のお客さんのターゲットは江間瞳、私なんです」と話すように、こうした細部に行き届いた工夫もすべて、江間さんがずっと「ほしいと思っていたお店」に近づけるためのもの。 小さな工夫の積み重ねが「くつろぎの場所」をつくりだし、何度もお客さんの足を運ばせるのかもしれません。
「ただいまって言ってもらえるお店にしたいですし、私もおかえりと迎えていきたい」と笑顔がすてきな江間さん
----- 「あ。もうこんな時間か」 深夜手前の時間、こんな言葉で終わる飲み会は後味がいい。 店を去るときのほろっとした名残惜しさが、後日またお店に足を向けさせるような気がします。 江間さんは「このお店を好きになってくれたお客様が新しい方を連れてきてくれます。お客様が自分と同じようにこのお店を好きになってくれそうな人を連れて来てくれて、『emma.』を大切に思ってくれることが嬉しいです。」と話します。 本当は秘密にしたいほど自分にとって特別な場所は、同じ気持ちで時間を過ごせる人を連れていきたいもの。 ふっと一息つきたいとき、大切な人とゆっくりとした時間を過ごしたいとき。 奥渋の和食バル「emma.」の扉をたたいてみてはいかがでしょう。
文・写真:平山高敏 編集:島田零子
和食バルemma.
ワショクバルエマ
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