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2023.01.02
京都よりみちこみち 八坂神社・花見小路【前編】
初詣で賑わう八坂神社。その門前で江戸時代から華やぎに溢れる祇園の花街。石畳の小径には京町家が軒を連ね、夕暮れには芸舞妓さんがお座敷に向かう姿も。艶めく花見小路と、そこから広がる風情たっぷりの路地裏をそぞろ歩いてみませんか。

凛とした京の冬に楽しむはんなり花街さんぽ

写真左:鍾馗さんは、家を守ってくれる魔除けの神様
平安京ができる以前から、京都を守ってきた八坂神社。地域の守り神として「祇園さん」と親しまれ、新春の境内は初詣で大いに賑わいます。本殿の手前に祀られている縁結びの大国主社では、今年の干支にちなんだかわいい兎にも出会えますよ。 お参りの後は隣の料亭で柚子雑炊のお昼をいただき、体がぽかぽかになったところで花見小路へと向かいましょう。四条通を西へ進み、赤い壁のお茶屋「一力亭」の角を曲がると花見小路です。周辺は、昔ながらの甘味処からカフェまでが並ぶスイーツ好きには嬉しいエリア。京町家を改装した素敵な空間で、まったりした時間が過ごせますよ。

白兎を救った大国主神が縁結びの神様に「八坂神社」

京都市内を東西に貫く四条通の東端に鎮座する八坂神社。石段の両脇で引き締まった体つきの狛犬が目を光らせる。優美な朱色の西楼門と左右の翼廊は重要文化財
本殿への参道にいくつもの摂末社が並ぶ八坂神社。そのひとつ、大国主社のご祭神は「因幡の白兎」で知られ、海辺で皮を剥がれて泣いていた白兎を助けた大国主神です。のちに、兎が取り持つ縁で八上比売(やがみひめ)に出会ったことから、縁結びの神とされています。

写真左上:本殿の参道に祀られる大国主社の社殿 写真左下:美容水は美御前社のご神水 写真右:神話「因幡の白兎」にちなんだ大国主神と白兎の像
社の脇にある良縁願掛所には男女の縁だけでなく、友人、家族、仕事などあらゆる良縁を願う絵馬がぎっしり。本殿へお参りをしたら、その奥にある美御前社の美容水で美容祈願も忘れずに。

写真左:おみくじの兎には飾り結びがあしらわれている 写真右下:良縁をしたためるハート絵馬
毎年1月3日に行われるかるた始め式は、本殿ご祭神の素戔嗚尊が和歌の神様であることにもちなんだ行事。十二単姿のかるた姫たちがかるたの札を取っていきます。

八坂神社
ヤサカジンジャ

折々の季節を映す朱の盃と柚子の香りが広がる雑炊「柚子屋旅館・一心居」

季節のおばんざい16種と椀物が付く「柚子雑炊膳」(4620円)。雑炊鍋には柚子が丸々一個入っている
八坂神社南隣の小さな門をひとたびくぐるとそこは別世界。祇園の賑わいがうそのような静けさに包まれた料理旅館のお食事処では、趣深い空間で心華やぐ和のランチが楽しめます。 「柚子雑炊膳」では、まったりとした白みそ仕立ての椀物に、かぶらや九条ネギなどの京野菜をはじめとする選りすぐりの食材を使った朱盃に並ぶおばんざいが16種。締めには、ジューシーな果汁たっぷりの柚子を使ったアツアツの雑炊を。爽やかな柚子の香りと風味に体も心も温まります。

レストランには築80年の建物の古材を天井やしつらえに利用。門をくぐり敷地に入ると打ち水のされた石段があり、一歩上るごとに期待も高まります。玄関で迎えてくれるおくどさん、滝が流れる庭園など、落ち着きのある風流な趣に心が休まります。

画像右:秋から冬にかけては黄柚子、春から夏にかけては青柚子が盛られる

柚子屋旅館・一心居
ユズヤリョカン イッシンキョ

日本で唯一の専門店が作る宝石のようにきらめく金平糖「祇園 緑寿庵清水」

四条通から花見小路に入ってすぐの場所にある「祇園 緑寿庵清水」は、1847年の創業から伝統と一子相伝の技を綿々と守り受け継いできた金平糖の専門店。麻の葉の文様をモチーフに白木と白を基調にした店内は、温かさを感じるスタイリッシュなしつらえです。

1月限定の「梅あられの金平糖」(2862円)。玉あられが核になるため、甘さ控えめの上品な梅の味わいが広がる
ポルトガルから伝わった南蛮菓子の中で、ひときわ美しく目を引いた金平糖を、季節のフルーツなど90種以上の多彩な味わいで展開。熟練の職人が丹精込めて手作りし、素材の味わいを楽しめる唯一無二の金平糖はおみやげにもぴったりです。

写真左:祇園限定の二種詰め合わせセットは1382円 写真右:丸山敬太氏デザインの祇園限定 信玄袋(桃花色/苺・林檎、3080円)

祇園 緑寿庵清水
ギオンリョクジュアンシミズ

自由な精神にもとづき、近現代アートを紹介「何必館・京都現代美術館」

5階の光庭。苔が輝く庭の奥には村上華岳の作品が掛かる茶室
「何必館・京都現代美術館」は、1981(昭和56)年に開館した美術館。年に数回催される企画展を軸に、近現代の絵画、工芸、写真などを収蔵・展示しています。館名は、定説を「何ぞ必ずしも」と常に疑い、自由な精神を持ち続けたいという願いから名づけられました。 最上階の5階にある、自然の陽光が差し込む「光庭」と呼ばれる壺庭には、冬には空に広がる窓から雪が降り積もることも。

天井の窓から光が差し込み、時刻によってさまざまな表情を見せる
北大路魯山人作品室
地下1階に常設されている北大路魯山人作品室では、陶芸家、書道家、美食家など多彩な顔を持つ魯山人の作品を鑑賞することができます。

紅白の椿が器の内外に鮮やかに描かれた北大路魯山人『つばき鉢』1938(昭和13)年

何必館・京都現代美術館
カヒツカン・キョウトゲンダイビジュツカン

「粋」をテーマに展開する正統派パティスリー「洋菓子ぎをんさかい」

リニューアルしたばかりの「和栗の贅沢モンブラン」(902円)。抹茶サブレのトッピングが京都らしさを醸し出す
国内外の一級品が集まり華やかで色褪せない町、祇園にふさわしい本物の洋菓子が揃うパティスリー。 1階のショーケースには、舞妓さんの花飾りをイメージした苺のショートケーキや、季節のフルーツを使ったケーキが並びます。なかでもモンブランは、和栗の甘露煮とクリームに、たっぷりの生クリームとカスタードクリームを合わせた王道の一品です。

1階のショップではケーキや手みやげ用の焼き菓子などを販売

写真左:2階のカフェ席 写真右下:抹茶や黒豆きなこなどの和素材を使ったクッキー「京ごころん 抹茶」(10個入/594円)
2階のカフェ席では、飛騨高山の工房に特注したテーブルと椅子でゆったりと過ごせます。 コーヒーは錦市場近くのびーんず亭、紅茶は五条の京都紅茶倶楽部のものを、エレガントな洋食器で提供しています。ケーキと合わせて、じっくり味わいましょう。

洋菓子ぎをんさかい
ヨウガシギヲンサカイ

後編はこちらから

名の知られた花街である祇園ですが、昼間はいたってフレンドリー。行列のできるお食事処や和洋のスイーツショップ、現代アートのミュージアムもあり、京町家の情緒を感じながら散策を楽しめます。路地裏をめぐったり、町家カフェでほっこりしながら、伝統を守りつつ新しいことに挑戦する祇園の姿を見てみませんか。
【後編】はこちらから
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text:Eriko Totsuka(Rakutabi)、photo:Yasutaka Ogawa 編集:ことりっぷ編集部
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