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2023.12.05
“フレンチカレー”って知ってる?東京・用賀にある『RAD CURRY』へ|by PARISmag
毎日の暮らしのなかで少しだけ心が弾むような豊かさをお届けするWEBマガジンPARIS mag(パリマグ)から、「RAD CURRY」をご紹介します。
元フレンチシェフがこれまで培った技術と経験を注いだ「フレンチカレー」が食べられると聞き、東京・用賀を訪れました。 駅から徒歩5分、用賀中町通りに面した場所に店を構えるタンドール料理とフレンチカレーの店『RAD CURRY』。 ここを営むのは、東京・三宿で人気ブラッスリーのオーナーシェフをしていた斎藤仁也さんです。 「元フレンチシェフがなぜカレーを?」「そもそもフレンチカレーってどんなカレー?」 斎藤さんのこれまでやフレンチカレーに辿り着いた理由、こだわりについて伺います。
偶然辿り着いた“フレンチカレー”とは?

「元フレンチシェフがつくる、タンドール料理とフレンチカレー」。 そう聞いて、すぐにピンとくる人は多くないはず。 “タンドール”といえば、インド料理店でナンを焼いたり、串に刺した肉や野菜を焼いたりするための筒状の壷窯型オーブンだし、カレーも、インドでも欧風でもなく、“フレンチ”。

頭にいろいろな「??」が浮かびながらも向かった『RAD CURRY』は、シックな雰囲気の店内に、きちんとクロスがかけられたテーブルが並び、フレンチレストランさながらの佇まい。 入り口を入ると、奥から優しい笑顔のシェフ斎藤仁也さんが出迎えてくれました。

オーナーシェフの斎藤仁也さん
東京・代官山にあるフレンチレストラン『シェ・リュイ』や東京・銀座にあったフレンチレストラン&カフェ『ル・カフェ・ブルー』などで修行したのち、25歳で独立した斎藤さん。 その後、東京・池尻大橋と三宿でビストロとブラッスリーのオーナーシェフを経て、それまでの経験をいかして飲食店のプロデュース業に転身。 シンガポールでヌーベルシノワを、フィリピンでラーメン店を、その他フレンチレストランなどさまざまな飲食店の立ち上げに携わってきました。 そして、出合ったのがもともとインドカレー店だったこの場所。 「なぜ、タンドール料理を?」の答えがここに繋がります。

「せっかくタンドールがあるなら、これを使ったメニューを提供したいと思ったんです」と斎藤さん。 そして同時に、研修で訪れたパリにあるレストランで出たまかないを思い出したと言います。 「今はパリではまかない文化はないのですが、僕が渡仏した20年以上前はまだあって、その時に出合ったカレーのようなメニューを思い出しました」 そもそも、フランスではいわゆるカレーという料理はありません。 斎藤さんによると、例えば子羊をカレー風味に味付けた料理や、地域によってはルー状のものにクスクスを合わせていてそれがたまたまカレー味だったというくらい。

「ある日のまかないで、適当にスパイスを入れて具材を焼いて、水と生クリームを入れてパッと出された料理がまるでカレーのようで。 この場所で何をしようと考えた時に頭に浮かんだのがその味でした。 それならば、インドでもなく欧風でもなく、ほかにないおもしろい”フレンチカレー“を作ろうと思いついたんです」 そして店名は、シンガポールで青年たちに教えてもらった「Rad(変わった、おもしろい)」という言葉から、『RAD CURRY』に。オープンして、今年で7年目を迎えます。
バリエーションは無限大。唯一無二の「フレンチカレー」のおもしろさ

試行錯誤しながらできあがったのが、今の「フレンチカレー」。 1番の特徴は、「味のバリエーションは、とにかく無限大」であるということ。 ベースは、ポタージュカレーとソースカレーの2種類で、そこにさまざまな具材の旨みを掛け合わせていきます。 どちらも野菜がベースで、ポタージュカレーは香味野菜をピュレ状にしたまさにポタージュスープとして提供できるようなもの。 ソースカレーは、じっくりと炒めた香味野菜を使っているのでコクのある仕上がりに。 それぞれのベースにスパイスや具材を合わせてカレーに仕上げていくことは想像できるけれど、その想像にとどまらないのが元フレンチシェフである斎藤さんの腕の見せどころ。 フレンチで使われるフォン(出汁)を使うことで、フランス料理をベースにしたカレーを作り出しました。

「牛バラの赤ワイン煮、牡蠣、いろいろな具材を合わせますが、具材をただそのままカレールーに合わせるのでは味のバリエーションが出ないし、具材とルーがうまくマッチしないんです。 だから、まずは食材自体のフォンを取るところから始まります。具材自体で取ったフォンをプラスすることでルーと具材がうまく調和してくれるようになりました」 エビの旨みが凝縮されたアメリケーヌソースはポタージュカレーと合わせたり、牛肉やチキンのフォンはソースカレーと合わせたり、具材だけでなく出汁もそれぞれに違うから味わいにさまざまな変化が生まれていくのだそう。

「同じチキンでもスモークチキンで出汁をとると、スモーキーな香りも移ってカレーの味わいが変化します。 2種類のカレーベースと具材だけで、何通りものカレーができあがるんですよ。組み合わせはとにかく無限大だから作っていておもしろいですね。 うちは8割がリピーターのお客さま。だからこそ、飽きさせないよういつでも新しい味を届けたいと思っています」 フランス料理で使うままのフォンを加えるだけでは味のバランスにズレができてしまうため、ルーと食材がうまく調和するように、クミンやコリアンダーなどのスパイスも加えます。 スパイスがうまく2つをつなぎ合わせることで、斎藤さんらしい「フレンチカレー」に仕上がります。
彩り豊かで目も喜ぶ。コース仕立てのようなカレープレート

Aセット(ドリンク付き) ¥1200
今回いただいたのは、カレー1種に自家製スモークベーコン・季節の野菜・ターメリックライス・トリュフバターナンがついたAセット。 カレーは常時9〜10種類から選べます。 今回は定番の人気メニュー「牛バラの赤ワイン煮カレー」を選びました。 テーブルに運ばれたお皿を見てまず驚いたのが、彩り豊かなこと。野菜たっぷりのプレートは舌だけでなく目まで楽しませてくれます。 「前菜のサラダ、メインのカレー、ターメリックライスとナンの炭水化物で、ひと皿でコース仕立てのような構成になっています」 メインであるカレーは、ソースカレーをベースに。 100%赤ワインで柔らかく煮込んだ牛バラ肉がゴロゴロと入っています。 牛バラ肉は、赤ワインと香味野菜と一緒に3日間漬け込み、それをオーブンで焼いてからさらに赤ワインの煮汁で3時間ほど煮込んだもの。 濃厚で旨みたっぷりのカレーソースと、ほろっと崩れるほど柔らかい牛バラ肉のおいしさは、手間ひまかけているからこそ味わえるおいしさです。 「ほかの具材も同じくらい時間をかけています」と、1つ1つに斎藤さんのこだわりが伺えます。

ほかにもエゾ鹿やイノシシなどのジビエカレーも人気なのだそう。 「エゾ鹿は冷凍ではなくフレッシュな状態で根室から取り寄せています。イノシシも丹波から届きます」 食材選びも妥協しない斎藤さん。 カラフルな色とみずみずしさに目を奪われた野菜は、栃木・益子にある『川田農園』の無農薬野菜を直送してもらっているそう。

葉野菜だけで約8種類も。3種類のドレッシングが添えられていたり、生野菜だけでなくマリネしたものもあったりと、とにかく手が込んでいる
「カレーだけでは味が単調になってしまうので、野菜でいろいろな味や食感を楽しんでもらいたいと思って。生野菜をカレーにディップして食べるのもおすすめですよ」 「せっかくフレンチを作ってきた人間がやるから、ほかと同じではつまらない」と、フランスパンの製法で作られたナンも絶品。 リッチな生地で外側がパリッと中はもちっとした食感。トリュフとバターの香りが食欲をそそります。
夜はフレンチレストランに。気軽に楽しめる24時間の無人販売店も。

カレーはランチのみの営業ですが、夜は前日までの予約で1日1組限定のフレンチコースが堪能できるそう。 6〜7皿の料理と自家製パン、デザート、1口カレーもついたおまかせコース。 「カレーもいいけど、フレンチも食べたい」という、馴染みのお客さまからの要望に応えたいと始めたのだそう。

「カレー作りは楽しいけれど、ランチタイムは時間との戦い(笑)。お客さまとゆっくり話す余裕がなくて。 夜はプライベート感を大事にしながら、ゆっくりとお客さまに楽しんでもらえる時間にしたいと思って始めました」 また、「トラララカレー」として、24時間無人の冷凍カレー販売店も神奈川県に3店舗展開中。山椒とパクチー香るフレンチキーマカレー、手羽元と白ワインビネガーのフレンチカレーなど6種類のカレーが気軽に購入できます。 お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

RAD CURRY
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高野瞳 写真:大童鉄平
PARISmag

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