![チョコレートの“美味しい”と“愉しい”を発信! [USHIO CHOCOLATL/広島県尾道市]|by ONESTORY](https://image.co-trip.jp/content/14renewal_images_l/268091/main_image.jpg)
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2018.08.03
チョコレートの“美味しい”と“愉しい”を発信! [USHIO CHOCOLATL/広島県尾道市]|by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から広島県尾道市の「USHIO CHOCOLATL」を紹介します。

悪ふざけのように集まった3人が作る真剣な味。カカオ豆と砂糖のみのシンプルな本物。

個性を極めた5種類のチョコレート。3人の若者とカカオ農園との“ダイレクトトレード”によって生まれた。
「チョコレート」と聞いて、あなたは一体どんなイメージを思い浮かべるでしょうか? 甘いミルクの味? それとも華やかな花やフルーツのようなフレーバー? 口当たり良くまろやかなそれらは、しかし、本当のカカオの味を表現しているとは言えないかもしれません。

ウシオチョコラトルを立ち上げた中村真也氏。真剣勝負でチョコレート作りに取り組む(中央)。
そんなありふれたチョコレートのイメージを塗り替えてくれるのが、USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)です。原料のカカオの風味を大切に、農園ごとの個性まで表現。工場長シンヤ氏をはじめとする3人の若者が、カカオ豆の仕入れから板チョコレートの成型、販売までを全て一貫して手がけています。「悪ふざけのように集まった」と称する個性的なメンバー達ですが、チョコレートへの姿勢は真剣そのもの。「農園さんが1番のアーティストだ」をモットーに、カカオ豆と砂糖だけで新鮮なチョコレートを練り上げています。

中央左が宮本篤(A2C)氏、中央右が栗本雄司(やっさん)氏。宮本氏が契約したカカオを使った『パプアニューギニア』は一番の人気商品だった。(現在、輸入困難なため、製造中止)。
きっかけは、福岡から尾道に移住してきてカフェで働いていた中村真也(工場長シンヤ)氏が、そこへの来客やイベント等を通じて知り合ったふたりを誘ったこと。広島出身の栗本雄司(やっさん)氏と、兵庫出身の宮本篤(A2C)氏。いずれもシンヤ氏と同じ移住者で、かつシンヤ氏が「面白い」と認めたベストメンバーです。現在仲間は11名にまで増え、陽光が降り注ぎ潮風が香る尾道から、カカオ農園とのダイレクトトレードによって生まれた本物の味をお届けしています。

大冒険の末に新鮮なカカオの「ダイレクトトレード」を実現!

チョコレートを練り上げる機械。それぞれのカカオ豆に合わせて回転の速さや時間を調節し、風味を最大限に引き出している。
ウシオチョコラトルのチョコレートの特長は、なんといっても国外のカカオ農園とのダイレクトトレード(直接取引)。カカオ豆が新鮮なうちに入手して加工できるだけでなく、本来は農園ごとに違う土や育て方、気候風土などから生まれる味の違いを存分に楽しむことができるのです。 「さらに浅めに焙煎しているので、発酵等によるカカオの個性が強く現れています。ある意味クセが強いとも言えますが、味や風味の産地ごとの違いが際立つんです。ぜひ6種類のチョコレートを食べ比べて、その驚きを味わっていただきたいですね」工場長のシンヤ氏は、そう胸を張ります。

農園さんが一番のアーティスト。「シングルオリジン」の精神でチョコレートに生まれ変わらせる。
一般的なカカオ豆の取引は商社が取り仕切っているため、多くの農園や産地の豆が混ぜられて売られています。ですが、それでは本当に良いカカオを選び取るのが難しい上に、農園ごとの個性も分からなくなってしまいます。さらにシンヤ氏がチョコレート工場を作ろうと思い立った時は、カカオ豆自体が一般に流通していませんでした。そこで一念発起したシンヤ氏と仲間達は、良質のカカオを農園から直接買い付けるべく産地へと旅立ったのです。なんのつても無いまま、治安の悪化が取り沙汰される中南米のグアテマラや、南太平洋の中央に浮かぶパプアニューギニアなどへ――治安の悪い地域を避けて山をいくつも越えていくなど、まさに大冒険だったといいます。

1個1個手作りの繊細な造形。農園ごとの個性が香る。
ウシオチョコラトルのように小規模な業者がダイレクトトレードを行なうのは、非常に珍しいそうです。しかし、その熱意にほだされた農園主達が見事に契約を結んでくれました。そしてチョコレートの原料の大半をダイレクトトレードのカカオにすることに成功したのです。

自分が食べたいものを作っていきたい。

個性的な6角形のタブレットチョコ。滑らかな“smooth”と、ザラッとした噛みごたえのある“cranch”の違いも楽しめる。
「ダイレクトトレードのカカオに関しては、育て方や農薬の使用状況などを全て自分達の目で確かめています。今後はそういった由来の分かる原料だけにしていき、頭の上から足の先まで全て知っているカカオで作りたいですね。尾道に住む人達全体の傾向なのですが、普段から食に気をつけていて、安全性への意識が高いんです。原材料の由来やオーガニックにこだわる人が多いし、僕自身、自分が納得できない物を人に食べさせたくない。自分が最高だと思うものだけを提供していきたいし、自分が食べたいものだけを作っていきたいんです」。そんな確固たるポリシーを持ったシンヤ氏のチョコレートは、「めちゃくちゃ美味しい!」と感激されることが多いそうですが、「苦い!」とびっくりされることもあるそう。しかしその原因は、冒頭に挙げた日本人のチョコレートの固定観念にあるのです。

出来立てのチョコレートとともにテイクアウトのドリンクも販売。尾道に訪れたらぜひ足を運んでみたい。
ミルクの甘さ、バニラの香り、様々な香料による後付けのフレーバー。そういった食べやすさやファッション性を優先して加工された“普通のチョコレート”は、カカオ本来の味や風味を曖昧にしてしまいました。ウシオチョコラトルのチョコレートは、そんなイメージを吹き飛ばす別物です。コーヒーなどでポピュラーな『シングルオリジン(同じ産地の原料)』を大切に、独自の風味を生かして練り上げられているからです。

シンヤ氏と仲間達。尾道のすがすがしい景色の中、今日も真摯にチョコレートを作る。
それを理解してくださっているお客様は『とても美味しい』と喜んでくれますね。逆に知らずに食べるとびっくりされてしまいますが、ダイレクトトレードによる農園ごとの個性が際立っているんです」。シンヤ氏の言葉通り、現在販売されている5種類のチョコレートはそれぞれがまるで別物。酸味とフルーティーな香りが特徴の『ベトナム』、紅茶 with ピーチフレーバーの甘い誘惑がたまらない『ハイチ』、レモンのような柑橘系のスッキリした味わいが楽しめる『グアテマラ』、ナッツの香味とスッキリした後味がオーソドックスな『ガーナ』、ハーブの癖の後に苺の香りが漂う『トリニダード・トバゴ』と、全種類味わってみたい個性派ぞろいです。

チョコレートを作るだけでなく、マイノリティの居場所も作りたい。

チョコレートも仲間達も個性豊か。あるべき姿で愉しく美味しく!
日本では珍しい産地重視のチョコレート作りに取り組んでいるウシオチョコラトル。ですが、シンヤ氏はここを単なるチョコレート作りの場に留めるのではなく、マイノリティの居場所にもしていきたい、と語ります。 「女性やLGBTの人達を積極的に雇用していこうと考えています。『ダイバーシティ』や『女性が輝く社会へ』といったキャッチフレーズはよく耳にしますが、それを実現するための法律などはまだまだ未整備だからです。実際に雇用の場を作り、経済活動にのっとった企業として動いていけば、実現に近づくと思うんです」。

店名の由来となったシンヤ氏の娘、潮(うしお)さん。朝の輝く海を望みながら、大事な我が子にも安心して食べさせられるチョコレートを作る。
さらに、そういった理想とチョコレートの本質を伝えるために、ヒップポップバンドも結成。シンヤ氏、A2C氏、やっさん氏の3人に加えて外部メンバーのDJ\PoP/ 氏も参加。計4人で3MC1DJスタイルの『ChemiCal Cookers(ケミカルクッカーズ)』として音楽活動を行っています。Facebookに活動状況のページを作っているので、ぜひ見てほしいとのこと。 シンヤ氏が目指すのは、“新鮮で最高に美味しいチョコレートをつくるおもしろい連中”。ウシオチョコラトルに集まった仲間達は、今日も尾道で“美味しい”と“愉しい”を発信し続けています。 (写真提供:USHIO CHOCOLATL)
USHIO CHOCOLATL
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