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2025.10.11
京都よりみちこみち 曼殊院道【前編】
古くから、そして今も、その静けさと美しさで文化人をひきつける洛北の地には、江戸時代のすてきな庭園が並びます。 さらに、一乗寺界隈は個性あるカフェやショップが豊富なエリアで、カルチャーの発信地としての顔も。紅葉さんぽの行き帰りにふらりと足を運んでみましょう。
小さな桂離宮と呼ばれる 皇族ゆかりの寺院「曼殊院」
紅葉の舞い散る苔庭に静かに臥せる牛「圓光寺」
秋景色の唐様庭園と 狩野探幽の色紙絵「詩仙堂」
江戸時代から街道の旅人を 雲母漬でもてなし300年「雲母漬老舗 穂野出」
小さなお店にずらりと並ぶ 滋味深い天然酵母のパン「天然酵母パンの店 こせちゃ」
洛北の秋色に染まる名庭と 一乗寺のカルチャースポット

洛北の秋は詩情豊か。比叡山を仰ぐ東山のふもとには、大原の三千院、八瀬の瑠璃光院、修学院離宮といった名刹が綺羅星のごとく並びます。そんな洛北の玄関口にあたるのが一乗寺エリアです。曼殊院道は、界隈の高野川から曼殊院までの約2・3㎞を、商店街や住宅地をぬうようにして結びます。
小さな桂離宮と呼ばれる 皇族ゆかりの寺院「曼殊院」

詩情あふれる秋の勅使門。白壁には最高位の格式を表す白い5本線
参道の坂を上りきった先で静かにたたずむ「曼殊院」は、皇族が歴代の住職を務めた門跡寺院。日本庭園の最高峰ともされる桂離宮を手がけた八条宮智仁親王の子、良尚法親王がこの地に移転したのが1656(明暦2)年のこと。秋には、書院前の枯山水が風雅な深紅に彩られ、水の流れを表す白砂と、鶴島と亀島の緑との色のコントラストが目を楽しませてくれます。

曼殊院
マンシュイン
紅葉の舞い散る苔庭に静かに臥せる牛「圓光寺」

「圓光寺」は、徳川家康が開いた学問所に始まる由緒ある寺院。書院、庭園、高台と多彩なロケーションから庭園を楽しめます。


広い境内には、山門すぐのモダンな枯山水「奔龍庭」、清らかな水の滴る音がかすかに響く「水琴窟」、円山応挙が作品のモチーフにした「応挙竹林」など見どころも豊富です。 写真は息をのむほど美しい苔を覆いつくす散りもみじ。その先には栖龍池(せいりゅうち)と呼ばれる古池や竹林の道もありますよ。
圓光寺
エンコウジ
秋景色の唐様庭園と 狩野探幽の色紙絵「詩仙堂」

四方に肖像をめぐらせた詩仙の間。扇型の彫り 物は伏見桃山城から伝わったとされる欄間。左甚 五郎の作とも
「詩仙堂」は約400年前、徳川家康に仕えていた石川丈山が武士を引退し、この地に結んだ草庵にはじまります。狩野探幽による中国の詩人三十六人の肖像画を掲げる小部屋があることから詩仙堂と呼ばれています。

狩野探幽の描いた肖 像に、各詩人の詩を石川丈山が自ら書いた

一番の見どころは鹿おどしの音が響く唐様庭園。山肌にそびえる背の高い紅葉を背景に、丸く刈り込まれた庭木が重なる情景は、中国の山々を連想させます。目には紅葉の紅、木々の緑、砂紋の引かれた白砂、耳には鹿おどしが響く音、五感で庭を感じましょう。

鹿猪が庭を荒らすのを防ぐために、竹を使って考案された鹿おどしの音が心地よい
詩仙堂(丈山寺)
シセンドウジョウザンジ
江戸時代から街道の旅人を 雲母漬でもてなし300年「雲母漬老舗 穂野出」

「穂野出」の名は、ここに1本の稲穂が生えており実を結ぶ吉兆とされたのが由来
1689(元禄2)年、この地で創業した漬物店「雲母漬老舗 穂野出」。当時、この辺りを領地とした公家の鷲尾家に仕えた田辺家は、比叡山へと続く関所を管理するとともに、茶屋で街道を行き交う旅人をもてなしました。

そのお茶請けとして出されたのが、小茄子を白味噌で漬けた雲母漬。今も、一子相伝で伝統の製法を伝え、元は京都の地野菜であった民田茄子を京都の白味噌に漬けて作っています。 初めての人には味見、リピーターさんには変わらぬ味であることを確かめてもらうため購入前に試食ができます。

売場には山椒や柚子など変わり味の雲母漬も
雲母漬老舗 穂野出
きららづけしにせほので
小さなお店にずらりと並ぶ 滋味深い天然酵母のパン「天然酵母パンの店 こせちゃ」

開店と同時にお得意さんがやってくる地元の愛されベーカリー「天然酵母パンの店 こせちゃ」。店主の仲村洋子さんは、最初から天然酵母にこだわっていた訳ではなく、好きなパンが天然酵母を使っており、そこから酵母を追究するようになったそう。

ご飯や果物から作る自家製酵母、米と小麦が原料のホシノ天然酵母を使い分け、国産小麦とともに焼き上げるパンは、1日に約50種にもなります。

天然酵母パンの店 こせちゃ
天然酵母パンの店 こせちゃ
詩仙堂の参道茶屋でいただく 郷土菓子を使ったパフェ「一乗寺中谷」

創業から約80年を数え「一乗寺中谷」は、祭りの日に食べられていたでっち羊羹を作ることからスタート。この近くで、宮本武蔵が歴史に残る決闘をしたことにちなむ「銘菓 武蔵」など土地の伝統を受け継ぐ和菓子屋さんとして親しまれてきました。

「中谷パフェ」1100円
「中谷パフェ」は、お店の原点「でっち羊羹」を使った人気のスイーツ。存在感のある竹の皮で包まれた羊羹が、パフェグラスにちょこんとのっています。小豆を米粉と練って蒸し上げたものなので、羊羹というよりもういろうのようなモチッとした食感です。

一面のクリームに豆がトッピン グされ枯山水に例えられる、 絹ごし緑茶てぃらみす1980円
また、和洋折衷スイーツの代名詞「絹ごし緑茶てぃらみす」は、白木の箱に一面のクリーム、そこに小豆、黒豆、鶯豆が整然とトッピングされ、枯山水に例えられることもある銘菓。その下のムースには白あんと豆乳、柳桜園の抹茶が惜しみなく使われ、スポンジには緑茶シロップが染みこんでいます。
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一乗寺中谷
イチジョウジナカタニ

いかがでしたか? 曼殊院道へは、京都駅からバスで約50分の一乗寺下り松町下車すぐです。四条河原町からは京阪電車で出町柳駅へ行き、叡山電車に乗り換えて一乗寺駅で下車します。もし、曼殊院から回るのであれば、バスは一乗寺清水町、電車は修学院駅で下車するのが便利です。 後編では、紅葉さんぽの帰りにふらりと立ち寄りたい、一乗寺駅付近のショップをご紹介します。楽しみにしていてくださいね。
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文:戸塚江里子 写真:小川康貴 編集:ことりっぷ編集部
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