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2024.05.23
文化や歴史のスケールを体感!「江戸東京たてもの園」レトロ建築めぐり【後編】
東京都立小金井公園の広大な敷地の一角で、江戸東京の歴史的建造物を移築・展示をしている「江戸東京たてもの園」。前編に引き続き後編では施設内の西エリアにスポットを当て、山の手通りに面したさまざまな建築様式の住宅をご紹介します。
アイデアが散りばめられたモダニズム建築「前川國男邸」
シンプルモダンなだけではない!「常盤台写真場」
時代の息吹を感じる「デ・ラランデ邸」で至福なひと時を
マスコットキャラクターグッズも!「ミュージアムショップ&カフェ」

「江戸東京たてもの園」とは?

「江戸東京たてもの園」は、失われていく江戸・東京の歴史的な建造物を移築・復元、保存をし、展示している野外博物館。1993年に東京都江戸東京博物館の分館として、東京都立小金井公園内に設置されました。文化的価値の高い邸宅や商店など復元された建造物から当時の暮らしぶりが体験できます。 施設内の広さは約7ヘクタール。その広大な敷地の中に下町や山の手の街並みが再現されているのも魅力のひとつ。敷地内にはほかにも、建築や江戸東京の歴史・文化をテーマにした展覧会を開催する展示室、建築に関する図書などが閲覧できる図書コーナー、休憩所、手打ちうどんや日替わり弁当がいただける食べ物処、カフェなども併設されているので、ゆったりと1日かけて見学できます。 前編では、商家や銭湯、居酒屋、旅館、乾物屋など下町の風情がただよう東ゾーンを紹介しました。後編では山の手通りに面して住宅が立ち並ぶ、西ゾーンをご紹介します。
「前編」の記事はこちらから

アイデアが散りばめられたモダニズム建築「前川國男邸」

こちらは、ル・コルビュジエに師事し日本のモダニズム建築の先駆者でもある、建築家・前川國男氏の自邸。

外観は、本を開いて伏せたような「切妻屋根(きりづまやね)」の建物です。元々は1942年(昭和17年)東京都品川区上大崎に、戦時体制下の限られた建築資材と広さの制約があった中で建てられた住宅で前川氏自らが設計をしています。

1973年(昭和48年)に解体後、軽井沢の別荘で部材として保管されていましたが、1994年(平成6年)に東京都に寄贈。設計図や写真、資料が保管されていたことから、前川建築設計事務所の協力を得て復元されました。

建物の内部は、外からの自然光が射しこむ心地のいい空間。白い壁に当たる光がとても印象的です。

戦後こちらのリビングはしばらく設計事務所として使われており、製図台も設置してあったのだそう。この吹き抜けの解放感のあるリビングを中心に、両サイドにはキッチンや書斎、寝室など、プライベートルームのあるシンプルな間取りになっています。

左上:開放時は90度に折り返せる戸袋(リビング外側) 右上:ダイニングテーブル 左下:内開きのリビングドア 右下:書斎
建物内には建築家ならではの工夫もたくさん。リビングの光を遮らないよう雨戸を開け、パタンと外側に90度回せる戸袋や玄関からリビングに入る際に視覚的に奥行感を出すために開き方を工夫したドアなど、細かい配慮がされている箇所もぜひ注目してみてくださいね。

シンプルモダンなだけではない!「常盤台写真場」

「常盤台写真場」は1937年(昭和12年)、現在の東京都板橋区常盤台に建てられた写真館。1997年(平成9年)に、この江戸東京たてもの園に移築されました。シンプルでモダンな外観がとてもかっこいいですね。

玄関には関東大震災の復興期に多く登場した「スクラッチタイル」も使われていて、1階はおもに住居、2階が写場になっています。

2階の写場に入ってみると、照明設備が発達していない当時、安定した照度を得るために建物にはある工夫がされていました。よく見てみると北側には、すりガラスを用いた大きな窓、天井の一部にもすりガラスを用いて被写体に光がキレイに当たるようしていました。ここで撮影した写真の仕上がりはどんな雰囲気だったのか、とても気になりますよね。

江戸東京たてもの園
えどとうきょうたてものえん
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Writer
物撮り写真家 モリサワ ジュンコ

魅力あふれるモノゴトをインスピレーションとともにお伝えします。デザインやアート、建築が好き
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